はむへいのブログ

三流大学出身、転職で一流企業に就職するも結局フリーターに

突然の一人立ち

もう何度目だろうか

先輩の携帯に何度電話しても反応がない


それは昨日の出来事だった
担当する病院にとある有名なDrが来て出張オペをすることになっていた

これはよくあることで
難しい症例だったり
同じ医局での勉強目的だったり


今回は後者だった


前日までに必要な医療機器をすべて準備し
確認もバッチリおこなった


そしてオペ当日
オペの序盤で使用する機器を出すようにDrからの指示

病院スタッフがかなり慌てている
スタッフ「○○さん(先輩)使用する機器が見当たらないんですが」
先輩「棚にあるので見てください」
スタッフ「やっぱりありません」

その場にいた全員が凍りついた

確かに昨日確認したときはあったはずなのに

少しの沈黙のあと

Dr「無いの?無いならいいや、なんとかするから」
スマートな対応でオペを再開し無事終了


通常のオペならまだしも今回は出張オペ
更に最悪なことに使用する予定だった機器は今来ているDrが開発に関わったものだった

オペ終了後、出張Dr、病院のDr、スタッフに謝る先輩
その後ろで一緒に頭を下げる私

「無事おわったから大丈夫だよ」
と相変わらずスマートな対応の出張Dr


一旦会社に戻り1時間後位に病院から呼び出され
先輩と支店長が病院に向かった


この業界には特有のルールがある(暗黙のルールも含めて)
○現在納入している業者から価格のみで奪ってはいけない
○先に提案した商品を他業者が提案してはいけない

もちろん例外もあるが一度も採用された商品を覆すのは
その商品が優れているほど困難である

またミスをした際のペナルティとして
○値下げ要求
○その商品の納入禁止
○ミスをした診療科目の出入り禁止
○病院自体出入り禁止

今回病院から告げられたペナルティは下から2番目
ミスをした循環器内科の出入り禁止だった

循環器内科では心臓のオペなども行い、この病院ではドル箱診療科目
うちの会社としても1回のオペで100万円以上の売上が上がることも珍しくなかった

前日に確認は確実にした
あってはならないが恐らくライバル業者が何かしたに違いない。でも確証はない


事件の翌日、先輩は会社に来なかった


その病院や他の担当病院からじゃんじゃん問い合わせの電話がかかってくる
何とか対応出来た物もあったがほとんど時間をもらって折り返す旨を伝える


先輩に電話をしてみる
出ない、なんだか泣きそうになってきた


困っている私を見て先輩たちが助けてくれた


何とか一日が終わり、また先輩に電話をしてみる
やはり出なかったが今回は留守電に切り替わったので今日は無事に終わったことを入れて電話を切った


翌日支店長に呼ばれた
今日から先輩が担当していた病院をすべて受け持って欲しいとのこと
突然の事で完全に固まってしまった

どうやら先輩の奥様から電話があって、先輩はとても働ける状態ではないこと
以前から激務の影響で心身ともに限界だったと言うこと

実はこの業界では珍しい話ではなく精神的にやられてしまうのはよくある話で
体力、精神力が無くなったときにポッキリいってしまうのだ


もちろん他の業界でも大変なのもわかるが、この業界特有の商品に人の命が関わるということが大きなプレッシャーとなる


ともあれ突然私の一人立ちが決まってしまった
当時まだ入社3ヵ月である

後にも先にもこんな話は聞いたことがない
本来であれば大体一年かけ先輩の担当先を少しずつわけてもらい経験を積む

また今回のようなケースの場合他のベテラン社員が担当するはずである

どうしてこうなったのか不思議で、最初会社を憎んだが
数年後、病院関係者に聞いた話で理由がわかった


支店長と先輩が呼び出された時、先輩はオペ直前にも確認すべきだったこと、予備の機器を準備していなかったと謝ったそうだ
だか支店長は自分の保身に走り、その対応に激怒した病院は支店長を出入り禁止にしたそうだ

つまり支店長はその病院を諦めた、捨てたのだ


そんなことは知らない私はたった一人の戦いを始めるのであった