初出勤の話
どっかーん
轟音と共に新品ではないが、きれいに掃除された事務机の引き出しが全部出てきた
オサレな作業着に着替え、席について数分後の出来事だった
最初何が起こったかわからなかったが、どうやら携帯で電話中の先輩が机に蹴りを入れ
そしてまだなにも入っていない引き出しが衝撃に耐えきれず出てきてしまったようだ
電話が終わり一言
「電話鳴ってるだろうが!新人研修で習わなかったか?」
私「ななな習いました」
と焦りまくり慌ててボールペンとメモ帳をカバンから取り出した所で
もう一人先輩が現れ自己紹介された
どうやらOJTで教育担当してくれる先輩のようだ
年齢は35歳、寡黙な感じでいかにもできる営業マンって感じ
挨拶もそこそこに、外回りまでまだ時間があるので
商材である医療機器のカタログを見ているように言われ
まるで辞書のように分厚いカタログを開く
先程の出来事があったので電話が鳴るたびに慌てて受話器を取る
でも先輩達の速いこと速いこと
結局その日は一度も電話応対できなかった
その後は得意先の病院を回り、挨拶をした記憶はあるが緊張してよく覚えていない
あっという間に17:30になり先輩から
帰っていいぞの一言
挨拶をしその日は帰った
後に聞いた話によると新人は最初1ヵ月は17:30に帰らせるように指示が出ていたようだ
今の時代だと蹴りが入った時点でブラックとか言われそうだが
15年前はまだブラックという言葉自体まだ浸透しておらず
仕事というのはこんなものなんだと思っていた
そして数ヵ月後この仕事の本当の恐ろしさを知るのだった